日本の漢字

 評判通り、高島俊男『漢字と日本人』もおもしろかったのだけれど、いまのわたしの渇を癒したのは、むしろ笹原宏之『日本の漢字』の方だった(→)。この本で、どれだけ日本人が創意工夫をして——たとえ現在まで流通していなくとも——数多くの漢字を作り上げていたのかが判った。その漢字の群を巨大フォントで目にして、胸を撫で下ろしさえした。
 とはいいつつ、こうした漢字への創作意図が、ただの妙としてだけ終わってしまうのはもったいない気もする。もっと有効活用できないものか。確かに、この本で紹介されていた「(リンパ腺の)腺」という漢字が、江戸時代から現在まで生き続けられているという強運には感動を覚えたのだけれど、何というか、わたしからすると、「腺」という漢字は、色気に乏しい。実用に向かなくとも、もう少し色気のある漢字がこの国に数多く出現してくれたら嬉しいと思うものの、そうはうまい具合にことは運ばないのだろうか。