比べちゃいけない

 今回の芥川賞の選考会を、村上龍は欠席したらしい。理由、書き下ろしを執筆中のため。週刊新潮福田和也が怒ってました。いったいどういうつもりなんだ、小説家としての力量が足りないから、こうした「文学賞の選考」といった仕事がおろそかになるんだ、と。
 そういえば最近村上龍の小説は読んでないなあとぼんやり思う。「13歳のハローワーク」がベストセラーになったり、「69」が映画化されたりで、けっこう今も現役の小説家といったイメージがあるけど、その実情はというと・・・って、やだなあ、なんか福田和也の尻馬に乗っかってるよ。
 別に嫌いじゃないです、村上龍。読んで元気になることもままある。あるけれども、正直「13歳のハローワーク」という本を出してベストセラーになるこの状況自体はあまり心地よいとはいえない。「うまいことやりやがって」的思いがある。
 まあそんなことはどうでもいいか。そして、このあとに村上春樹の話を続けたら斎藤美奈子に鼻で笑われそうだけど、書いてしまおう。毎日新聞文化欄「村上春樹レイモンド・カーヴァー全集完訳」の記事。またいつもの村上節が炸裂してます。

 大学時代にショックを受けた作家はカート・ヴォネガットブローティガンで、彼らは簡単な言葉を使っていながら、書いていることはかなりラジカルだし深い。こんなに敷居を低くして深い面白い物語を書けるということに心を打たれた。(略)実際にカーヴァーがやっていたのもそれだし、僕がデビュー以来やってきたのも、そういうことじゃないかと思う。

 また春樹ファンが喜びそうな言葉だ。内田樹とか。といいつつ、やっぱおもしろい、というか、刺激にはなるなあ。
 そんな村上春樹の新作が9月上旬、講談社から刊行されるそうです。

 新しい小説は、長編では初めて全部三人称で、文章も現在形。文体自体も少しは変わっていると思う。

 正直に言おう。ひじょぉぉぅうに楽しみだ。「July,July」(オブライエン)の影響はあるかな。わくわく。こうした楽しみを、今村上龍の小説に感じ取れるかといったら、それはかなりびにょうな話で。(だから、この両村上を並立して語るのはものすごく恥ずかしいことだって自覚しないと。)