2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『姑獲鳥の夏』読了

1回読んでみたかった……。というわけで読んでみて、感嘆。文庫版です。京極夏彦著。1999年。講談社刊。ページごとに、きちんと文章が収まっていることが、読み進めるうちに妙な快楽を醸し出してきますね。「次のページも大丈夫かな?」「ああ大丈夫だ」とい…

匙加減

『東京タワー』そして『ホリー・ガーデン』と江國香織作品を読み続け、うん、おもしろいおもしろいとかなりに満足しきっていたのに、『冷静と情熱のあいだ』に取りかかった途端、あれれ……と、わが体内のグルーブ感が停滞気味になり、ちょっと困惑気味という…

『きみはポラリス』読了

いいっすね。慕情をテーマにした全11短編を括るタイトルとして、秀逸。三浦しをん著。2007年。新潮社。はっきりいって、恋の異形(←他にいいことばが思いつかなかったのだけれど)の醸し出す緊張感は、そうだなあ、ぬるま湯に浸かってて、急にわきからからだ…

『ぼくの小鳥ちゃん』読了

で、同じ江國香織著ながら又こっちはまるで毛色が異なっていて。実際、荒井良二氏のイラストはカラフルだし。ポップスみたいっすね。本の作りじたいが。そうそう。毎回江國香織作品を読んで感じるのが、善意と悪意の配分が絶妙、ということで、この作品なん…

『すいかの匂い』読了

またこれは……と何に対して絶句しているのかというと、ここに出てくる子供たち(ローティーン前後)の描写における説得力に対してで、解説で川上弘美氏が指摘しているように、それこそ手に取るひと各々によってその感じ取る濃淡もまた異なってくるのだろうけ…

『スキップ』読了

懐かしいっすか? ぼくもまさかこの本を実際に手にする機会が訪れようとは。北村薫著。1999年の新潮文庫。とうぜんのように図書館でのこの本はぼろっぼろ。皆に、愛されてるんでしょうなあ。あのですね、最初に読み始めたときには、ふつうのタイムスリップの…

『悪人』読了

2007年という年にはこの本の評判をあちこちで耳や目にする機会があって、ということは必然的に食指というものの活動もそれなりに活性化するというものなのですが、その評判とともに漏れ聞こえてくる殺人が絡んでいる云々という噂にはその食指の動きも又同時…

『望みは何と訊かれたら』読了 

去年の暮れまで1年以上も読売に連載されていた小池真理子氏による『ストロベリー・フィールズ』という小説はほんとうにおもしろくて、その連載されていた間に味わうおもしろさというのはそれこそ刹那的なものだから、たぶん一冊の本として後にまるまる通し…

遍在

サウナでぼんやりと眺めるともなく眺めているテレビから連続で中村靖日の姿がCMで映っているのに接すると、ああ、2009年はこのひとにずばり日が当たるようにできているのかななどという風にもぼんやりついでに思ってしまうというものです。何のCMかというと…

『神様のボート』読了

図書館利用回帰第7弾。江國香織著。新潮文庫。2002年。しかし上みたいなことを書くと正直にこの本に対し食指が動いたというのは何となく気恥ずかしいものがありますが、けれども、今までこの場で「読みました」と報告した本ってすべてが(といっても過言で…

食指

食指が動くの食指とは、辞書に拠れば人さし指というのが正しいのだろうけれど、個人的にはそれよりも、実際に食指が動く場面を想定してみると、むしろ触手状のものが体内で(というかオーラとして)その食指が動く対象に向かってうねうねと近づき蠢き絡める…

『終末のフール』読了

図書館回帰第6弾。伊坂幸太郎著。2006年。集英社刊。今回はじめて伊坂幸太郎氏の本をまるまる最初から最後まで読み通しましたよ。なるほど。こりゃおもしろいやと(比べるつもりはないけれど、上記『からくりからくさ』より段違いにむつかしい語が出てこな…

『からくりからくさ』読了

図書館回帰第5弾。梨木香歩著。1999年。新潮社刊。三浦しをん氏の『三四郎はそれから門を出た』というブックレビューで激しく興味を持ったひとというのが、この梨木香歩という人物でありまして。評判は耳に入ってきていたのですが。だからこそ自分とは関係…

『エロマンガ島の三人』読了

図書館回帰の第4弾。長嶋有著。エンターブレイン刊。2007年。副題が「長嶋有異色短篇集」となっていて、とすると、これはあれかな、『ドラえもん』に対する『ミノタウロスの皿』みたいなのかな、と思ってたら、まあ半分は正解ってとこですかね。「エロマン…

ふところの犬

初詣はすごい人だかりで——といってもぼくはまだ行っていないのですが——そのすごい人だかりに中に小型犬を連れている初老の男性がいたと聞き、なんだかなあと思いつつも、その人が、いざ賽銭を入れ終えたあと、ふところに抱いた犬の両前足を合わせていっしょ…

『夕子ちゃんの近道』読了

図書館回帰第3弾。長嶋有著。(←いつでもこの語を打つと「長嶋郵貯」になってしまう。覚えないっすねえ。)新潮社刊。2006年。いわずとしれた記念すべき栄えある大江健三郎賞第1受賞作。というわりにミーハーな理由で手にとってみたところ——ちょっと難解で…

妬く

怒りで人を束ねることは可能だけれど、嫉妬で人を束ねることはできるんですかね? 無理かなあ? よく思い出すのが、藤子・F・不二雄の(ここでも再三取り上げていたような気がする)『イヤなイヤなイヤな奴』で、あそこに出てくる、男たちをみごとに一心に…

『三四郎はそれから門を出た』読了

図書館回帰第2弾。三浦しをん著。ポプラ社刊。2006年。この本も『桃色トワイライト』同様、前々から読みたくて読みたくて読みたくてたまらなかったから、ようやく読み終えることができて感無量……。ブックレビュー、って情報は知っていて、でも、いざ手に取…

ほどよさ

となりの部屋の仏壇の前では水仙が飾られていて。ああ、水仙の匂いっていいっすね。その質もそうなのだけれど、ただよいぐあいにおいても。百合なんかだと、けして嫌いではないのだけれど、ほら、濃すぎるじゃないっすか。押しつけがま……いやいや。百合と形…

『桃色トワイライト』読了

ところで今年はふたたび図書館利用に回帰する予定であります。買いたい本と、読みたい本とは、自分の中で必ずしも合致しない——いやいや、まあその……できることと、やりたいこととの比率は、もしかするとこれらとかなり似通っているのかもしれないなあ(義務…

賀正

川沿いを歩いて、えーと「潮入」っていうんですか? 海に注ぎ込むふきん。そこでじっとふだん使っていない目の筋肉を酷使してきました。つまりは、果てを見るという行為を心ゆくまでしてきた次第であります。気持ちよかった。というか、頭上に架かっている橋…