『神様のボート』読了

 図書館利用回帰第7弾。江國香織著。新潮文庫。2002年。しかし上みたいなことを書くと正直にこの本に対し食指が動いたというのは何となく気恥ずかしいものがありますが、けれども、今までこの場で「読みました」と報告した本ってすべてが(といっても過言ではないくらいに)食指が動かされたものばかりっすからね。というわけで、これもまた、はげしく自分の中で食指を動かされて手に取った本。
 ただ江國香織の本って、おもしろいんだけれど、それがどうおもしろいのかをいうのかが(自分にとって)かなりにむつかしいというか……。おもしろいというより、むしろ歴然と気持ちがいい、に近いものがありまして。美味しい、とかね。これもまたそういう本で。
 途中から、ふーんと思い、書き写したくなる欲求の生じるがままに書き写したフレーズ。

 言葉で心に触れられたと感じたら、心の、それまで誰にも触れられたことのない場所に触られたと感じてしまったら、それはもう「アウト」なのだ

 本篇と、関係がないといえば関係がない(だけれどもまったく無関係だとも言い切れない)……そう、江國香織の本の魅力って、味覚や色彩の加減だけでなく、そうした、本篇と関係がないといえば関係がない(だけれどもまったく無関係だとも言い切れない)フレーズにもあったりもするわけで。

 希望というのは未来にある何かではなく、いまここにある何かなのだ。たぶん。

 とか。

 真実はいつも一瞬なのだ。

 とか。
 著者としては、これらを、アフォリズムのつもりで提示しているのでは(作品全体からすると)ないらしいし。謎です。そこがいいのかな? やっぱり、よくわからない。わかってしまったら、その時点で、魅力は立ち消えになるとか?