2008-01-01から1年間の記事一覧

フェイント

センター試験に江國香織著「デューク」が全文掲載され、あちこちですすり泣く生徒が続出。という話をこの前の「メロディアス ライブラリー」で聞いて、その話じたいもたいへんおもしろかったのだけれど、個人的にはそれよりも、「最後の最後まで『デューク』…

『骨盤にきく』読了

きくは「効く」よりむしろ「聴く」寄り。というわけで、けっこうこちらの好みに合致。特に第3章「本物の集中力は骨盤から生まれる」のパーツ。 本当の集中というものが、ただ頭が興奮しているような状態ではなく、自分が心から好きなことに向かったときの静…

『よく嚙んで食べる』読了

初期のドラえもんがあまりに美味そうに餅を食べるのを見て勝手に想像力を逞しくし実際の餅を口にした途端に味わった幻滅ももしかすると作用しているのかもしれないけれど、正直、今まで周囲で立ち上がっていた「お餅が美味しい」という味覚感覚の表明にいま…

20代のトミーはきちんと太っていて欲しいな

世にどのような俳優が存在しているのかの知識についてはとんと不如意なもので、だから、できあがった映画を見て、へえ、こういう「手」で攻めてきたのか——と感嘆する日を想像をするのが楽しみな小説の映画化の報が最近続きます。『風が強く吹いている』(三…

『歯はいのち!』読了

咀嚼というものに興味が生じての購入。『ウンココロ』と同じく、装丁のイラストが寄藤文平氏なので、ふたつ書棚に並べておくと調和が取れていいですね。そもそも、咀嚼に興味が生じたというのも、この『ウンココロ』に依るところ大だったわけだし。 唐突です…

『どこから行っても遠い町』読了

現時点における川上弘美の最新作。2008年。新潮社刊。あれですよ。この本における<捨てたものではなかったです、あたしの人生>というコピーを帯や広告で見かけたひとは、きっと、読了後にこのコピーの色合いをまるで違うものとして感受することになるはず…

刷り込み

小泉毅という男が犬に異様なまでのこだわりを見せるのは、自身の名の由来となった「犬養毅」の「犬養」という名字に幼い頃から強くアイデンティファイしていたからだ――などと、某書に出て来た「犬養毅」という字面を見ながらつらつらと思う。小学6年男子とい…

公的抑圧

二重に古い話ということになるのだろうけれど、ナンシー関が車の運転中に気持ちよく歌っていたというYMOの「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」ってどんな曲なんだ? と、ふと好奇心に衝き動かされ図書館で借りて聴いてみたところ(「公的抑圧」ヴァージ…

修正

先日、「レッドクリフ」吹き替え版で、諸葛孔明を演じる金城武を見て、わっかいなー、これで30代かよ、と真剣に驚いていたのですが、「K-20」の予告編で彼の地声を聞き、年齢相応の容姿が目に飛び込み、このことに再び驚く。吹き替えマジックというか。声の…

「ハッピーフライト」鑑賞

いいですねえ。大好きだこういう映画。感情的に不快を多大に喚起する人物がたとえ出て来たとしても、きちんとそのアフターケアまで描写されているという。飛行機という物体にはまるで興味がない、けれども飛行機、というよりも飛行場にまつわる雰囲気には「…

『ウンココロ』読了

……にしても、ウンコを前にして、ニュートラルというか、中道の態度を貫くのってかなりに難しいものがありますね。激しく厭うか、もしくはおちゃらけるか。この本で展開されている「LOVE UNCO」ワールドは、一見、後者の部類に属しているかのように思えるけれ…

「レッドクリフpart1」鑑賞

「三国志演義」関連の知識は皆無なので、漢字名の洪水に恐れをなして吹き替え版で見たのだけれど(今回はじめて「ショカツコウメイ」というのがどういう存在なのかわかった)、別に字幕版でも平気だったっすね、あれなら。いいひと・わるいひとの区別もはっ…

伏兵

寒くなったから、どれ、ひさびさに押入から羽毛布団でも下ろすか、と、ふかふかのぬくぬくのぼわぼわを夢見ながら就床時間を迎えたとたん、あああああ、鼻づまり復活……。なんか思い切り「負けた!」って気がします……。かなりに調子よかったんだけどなあ今期…

『自民党政治の終わり』読了

政治の季節が巡ってきた、というわけではぜんぜんなく、この前読んだ与謝野馨著『堂々たる政治』がけっこう面白かったから、関連本にでも手を出してみるかと軽い気持ちで読んでみた次第。んんんー、つまりは、自民党が近々野党になる、という意味ではなく、…

しをん氏の鼎談を聞いてきた

男性ふたりに挟まれて、どちらにも差がないようにと均等に肯いてみせる三浦しをん氏の首の動きにまずは感嘆。公開鼎談の真ん中に配置されるひとって、けっこうたいへんなんですね。テニスのラリーを見てるひとのよう。「ねるとん紅鯨団」に来た女性ゲストが…

『1日3分 腸もみ健康法』読了

2005年。講談社α新書。砂沢やす枝(「やす」はにんべんに夫)著。体の声を聞くというフレーズはこの本にも出て来ますね。そりゃそうか。腹の上から腸を揉んで揉んで揉んで揉みまくって腸の憩室にこびりついている頑固な毒素を排出させよう、という、副題が『…

当籤

当籤かあ……。いや、新明解では、くじに当たることは、「当籤」で、「当選」は、ほら、選挙に受かった際に使うものだから、こっちでは用いない方がいいよ、まぎらわしいからね、と、ていねいにもアドバイスしてくれてるんですよ。でもなあ……たぶんぼくこの「…

明日は神保町で三浦しをん氏の鼎談を聞いてきます

これこれ(→●)。未だに『仏果を得ず』以外では三浦氏に直接――というのかなんというのか、ともかくこれ以外では古本でしか買ってないから――金を落としてないわたし。んでもって、この企画も無料なもんだから……うーん、なんか、ここまで廉価で楽しませてもら…

『堂々たる政治』読了

与謝野馨著。2008年。新潮新書。って、政治に関してはまったくもってパッパラパーなんですが、でも、面白かったっすよ。この本。少なくとも、1冊の本として、面白く読むことができました。つまりは、この本に表れている与謝野馨というパーソナリティーに同…

体の声を聞くということ

最近本を読んでいたら「体の声を聞く」というフレーズをよく見かけるのだけれど、んー、これはいわゆるシンクロニシティってやつなんですかね? というか、そもそもぼくの体が「声を聞け!」と訴えているからこそ、こうしたフレーズが気になるようになってい…

『風が強く吹いている』読了

周回遅れの感動体験。この本が出版された2006年に店頭で眺めた際には、山口晃の手でカバーに描かれている走やハイジやムサや双子その他のメンバーのイラストを見て、「そうか、駅伝の話かあ」と自分との接点を見出せなかったのに、どうして今回――とくべつに…

「文学史」再編成

で、その「BRUTUS」(10月15日号)なんですが、橋本治のプロフィール欄にこんなことが記されている。 「文学史」を再編成する長大な連載が『新潮』誌上でついにスタート。 「文学史」を再編成? それ、というのは、この前「一冊の本」(2007.1)で書いていた…

「大琳派展」@東京国立博物館

あれ、この光琳の「風神雷神図屏風」は前にもどこかで実物を見た覚えがあるな、と思っていたら、どうやら2004年に東京国立近代美術館で行われた「RIMPA展」でのことらしい。ちゃんとチケットも取ってありました。どちらも光琳の雷神がチケットにメインモチー…

『最後の「ああでもなくこうでもなく」』読了

そうなんすよねえ。終わってしまうんですよねえ。広告批評。といっても、実のところ、ぼくの関心は、この雑誌の連載を終える橋本治氏の今後の動向の方に向かっているのですが。どうするのだろう? この連載に注がれていたエネルギーはいかなる形で他のものへ…

鼻が詰まらない

だいたい毎年この季節になると、豚草のせいなのかなんなのか、鼻づまりが発生し必然的に夜の眠りの質が悪くなっていたのだけれど、どういうわけだか今年は(多少くしゃみは出るものの)寸ともそうした症状が顔を出さずに済んでいるので、内心小躍りしながら…

「トウキョウソナタ」鑑賞

かなりに私情に溢れた見方だと思うので――ちょっとネタバレもあるし――たたみますね。(今回はじめて、この「続きを読む」記法を使いますわ。)

エモーショナル・ドローイング

竹橋の東京国立近代美術館にて。さすがに、そのとき聴いてきた曲が頭に流れる、というふうにうまい具合にことは運ばなかったのですが、しかし、確実に、ペンを握っていたとき流れていたであろう曲のスピリットじたいは感知できたと思いますよ。奈良美智の最…

新潮文庫の三浦しをん

なんだか三人官女と五人囃子みたいっすね。いや、『秘密の花園』と『私が語りはじめた彼は』の関係が。関係、って、この2作には、ただ著者がいっしょという関係しかないのだけれど。それをさえ、関係といっていいのかどうか躊躇われるものはあるのだけれど…

『格闘するものに○』読了

ブックオフにて、『秘密の花園』『私が語りはじめた彼は』といった、他の三浦しをん本(新潮文庫)と共にまとめて売られていたのを購入。いや、向こうから、「買ってくれ・買ってくれ」光線を激しく発していたので。で、家に3冊――というか、気持ちでは「3…

『エデンの東』読了

読んだあ。全4巻。気持ちよかったあ。鳥肌が立つということばに眉をひそめるかたもおありでしょうが、でも確かに快楽を感じているときに両腕の肌があわ立つことというのは、そうめったにないことでありながらも、でも確実にあるのだから、ついつい語彙不足…