2008-01-01から1年間の記事一覧

『エデンの東』に着手

カズオ・イシグロ著『わたしを離さないで』文庫化。いやいや……文庫巻末で土屋政雄氏が提示された疑問に、なるほどなあ、と膝を打つ。そういう解釈もあるのか! と、慧眼を発揮された際にはいつでもすなおに感心します。パズルの最後のピースがぴたりとあては…

池上永一氏目撃

ん、どっかで見た顔だと思ったら、作家の池上永一氏でした。丸善丸の内本店2階にて。新刊が平積みされている前で、店員2名と、あとこれは氏の関係者なのかな、年配の淑女といっしょに、楽しそうに談笑しておられました。今まで氏の作品に触れたことはない…

「デトロイト・メタル・シティ」鑑賞

実は最初、失敗したあ。とか思ってたんですよ。ちぇ。PONYOにしとけばよかったかな。なんて。けれども、「クラウザーさんが死んでいる!」らへんからかな? がぜん、好きの度合いが高まってきて、最後は、もう、怒濤の勢いで気に入ってました。いまだにその…

『2階で子どもを走らせるなっ!』読了

副題・近隣トラブルは「感情公害」。橋本典久著。光文社新書。2008年。なるほど。と、決して近所における煩音問題とは無関係ではいられない身としては、いろんなところで感心しながら読み進めておりました。あ、現在、階下がピアノ教室というところに住んで…

江國香織評『昔のミセス』

おっと。毎日新聞で金井美恵子氏の新刊が取り上げられています。めずらしい。幻戯書房刊『昔のミセス』。しかも、評者は、江國香織氏(→●)。 美しい無駄をふんだんに盛り込んだ文章は、ごくごく飲みたいくらいおもしろい。無駄という言い方は誤解を生むかも…

高橋留美子のYES or NO

http://weekly.yahoo.co.jp/71/work/index4.html#q7180 一瞬、「Q79 夢は頑張れば叶うと思いますか?」の問いに、(オレンジ色は目立つから)「YES」と答えているのだろう、まあマンガ家だし、純粋な訴求対象を考えると、そういうのが妥当だろう、と思ってい…

『「死の棘」日記』も買う

もともと、今回『死の棘』を手に取ったのは、桐野夏生氏の新刊インタビューの中にあった、「毒があたった」発言に、はげしく興をそそられたから、なんですね。前に読んだ、金井美恵子氏のエッセイの影響(→●)も、たぶんにあるのだろうけれど。 ・桐野夏生さ…

あなただけがあたしのいきがいだったんだわ

にしても、おもしろいなあと(やはりこれは不謹慎ということにはなるのだろうけれど)味わい尽くしてしまいたくなるのは、以下に写したような『死の棘』における最初の畳みかける饒舌。 「おまえ、ほんとどうしても死ぬつもり?」 「おまえ、などと言っても…

島尾敏雄の写真

新潮文庫の島尾敏雄『死の棘』に載っている著者の写真からは、まったくもって、実直だの謹厳といった(要するに真面目そのものの)雰囲気しか、予備知識のない者としては受け止められないものだから、この小説で描かれている阿鼻地獄に対して、ミスキャスト…

カーテンを買う

新しい家具を選ぶよりも新しいカーテンを選ぶ方がずっと大変だとは、確か、この前図書館に返した金井美恵子著『迷い猫あずかってます』に書かれていたことで、なるほど、なにより、その選択肢の多さに辟易してしまうんだろうなあ――機能面というオプションは…

36色鉛筆を買う

銀座伊東屋リニューアル。ということで、おや、いつも買ってたあれが見当たらないんだけれどと、得意客らしきひとたちが店員を巻き込みつつ右往左往している様(でもみんなどこか楽しげ)を眺めつつ、購入したのは、36色鉛筆の中ではいちばんチープだった三…

ふつうのコンセンサス

あれですね、毎回、散髪をする際に、 毛先を1センチほど短く 全体を梳いて もみあげは普通に 耳は出して と頼むだけの簡易さをキープするために、3週間に1回の割で、あちこちの1000円(もしくはそれ以下)の散髪屋に顔を出すように今年からなっているのだ…

組んだらうれしい

寝る前に、「一冊の本」8月号に連載されている小谷野敦「美人好きは罪悪か」(今回の題目は「美人の経済効果」)を読み、なんとかして、小谷野氏と川上弘美のタッグを組ませることはできないものだろうか、とうつらうつらしながら考える。タッグを組む、と…

夜の誤飲

たぶん、やかんで作ったばかりの麦茶を、すぐに冷蔵庫に入れるとまわりのものを(へたすると )痛めることにもなるから、ひとまず、洗い桶に水を張った中に入れて冷ましているんだろうと何の疑問もなしに思い込み、喉が渇いていたので、その水容器からコップ…

行かえ抹消

中上健次の文章の行かえは編集者がやっていたっていうのはほんとうですか? で、金井美恵子は、わざわざ頭の中で、行がえを「抹消」しながら読み進めているという話なのだけれど(『重箱のすみ』)、そういえば、ナンシー関がいちばん最初にいとうせいこうに…

ところでブックオフといえば

引っ越しの際に利用した古本買い取り業者はここ。他に探すの面倒くさかったので。いやいや……。苦言、というのではないのだけれど、「バーコードを書いた紙をすべての箱に中に入れておいてください」というのは、ちゃんと最初にいってほしかったなあ……。せっ…

105円

所用で寄った駅の構内でブックオフの広告を見かけたのでふーんと思いつつ――そもそもその「所用」じたいがかなりにおもしろからぬものだったから――15分かけて立ち寄る。暑かった。でもラッキーでした。金井美恵子著『重箱のすみ』を手に入れることができたか…

休憩力

その内こうしたパラドキシカルなタイトルを持つ新書も登場してくることでしょう。なんとなく思った。もちろん体験から。パラドキシカル、というのともちょっと違うか。真面目な泥棒、とかいうのよりも概念として逆方向ではないしね。(たぶん。)

畳の色褪せ・その後

棚をどけてまだ1週間も経ってないのに、もう、青々としていたところが周りの畳の色と区別がつかなくなってきている……。たといスタート時点で差があったとしても結局ゴールはみな一緒。という教訓にも似たようなことをここから読み取ることも可能かもしれま…

『モスラの精神史』読了

昨夏の本。講談社現代新書。小野俊太郎著。昨日、王蟲についてちょこっとばかり触れたのはこの書が為であります。まあ、そういわれてみれば、「モスラ」の後継者としての「ナウシカ」という図には、肯じざるを得ない面がありますね。虫と女性。(いや、現時…

Ωの思い出

受け狙いだったのか何なのか、小学6年の夏期講習の際、講師の青年が「Ω」(オーム)を「王蟲」に掛けていたことがあったのですが、当時は『風の谷のナウシカ』の存在は知っていても中身までは見ていなかったから、「急に何をいい出すんだろうこのおっさんは…

表紙といえば……

長嶋有著『ジャージの二人』。集英社文庫版。おどろきましたよ。いつのまに、あんな風になってたんだ? って、映画がきっかけなのは百も承知なのですが。心底、おどろいた。(映画、好評なのかな? 機会があれば見たい。)

アルベルチーヌとアンドレ

頭にブーケを載せた若い娘が、薄くピンク色に染まった尻をこちら側にむき出しにし、それを、ベッドに腰掛けた金髪で全裸の同じく若い娘がほほえましげに眺めている——というのが集英社文庫『失われた時を求めて』10巻の表紙イラスト(→●)なのだけれど、「か…

ちょっとつけたし

名前をつけることによって人を支配するという話は、まあ『千と千尋』とか、支配云々とはちょっと違うのだろうけれど、戒名とか、洗礼名とか、ニックネームとか、そういうところにあまねく行き渡っているような気がします。こういうのものの場合、「名付けら…

『いきなりはじめる仏教生活』読了

変な本……。って、これけっして貶したりしてるのではなく。充分、おもしろいっす。ただ、そのおもしろさが、書かれていることはもちろんのこと、語り口、に依っているところも、決して少なくはない、というところに戸惑ってしまうというか……。「一冊の本」(…

『風花』読了

現時点での川上弘美氏の最新作。集英社刊。2008年。読むのが遅れたのは、実のところ、帯の文句に食指が動かなかったため。「愛はいかにして色あせていくのか。」……うーん。ただし、ブックオフで売られていたのを見て、速購入。その日の夜に読み終える。相変…

引っ越して1ヶ月

もう、畳の色が褪せてきている、というのは、窓際に置いていた棚を机の横に移動させた際にわかったことなのだけれど――棚が置いてあったところは、周りより確実に青々としている――毎日見ていても、少しもそんなことには気がつかないのです。夏場だからこその…

内蔵休憩

評判の高い『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』(2008年・幻冬舎新書・山本ケイイチ著)。買ってきました。読みました。おもしろかったっす。そこで気になったのが、高級フィットネスクラブのロッカーの広さより、アンダーアーマーのウェアより、安い…

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』読了

ああ、こういうのが、まさに「っぽい」です。自分の中にある「江國香織のイメージ」と、寸分違わず一致する。この短編集自体が、代表作のひとつと目されている面も多分に作用しているのだろうけれど、うーん、何となく、安心します。安心というか、手練れの…

『赤い長靴』読了

読みやすいなあ。読みやすくて、なんて複雑なんだろう。と感嘆しっぱなし。結婚後10年の夫婦のあれこれ、といって想像されるあれこれとは、たぶん、異なることが描かれている、筈っす。なにがすごいって、事件らしい事件が描かれていないのにもののみごとに…