『「死の棘」日記』も買う

 もともと、今回『死の棘』を手に取ったのは、桐野夏生氏の新刊インタビューの中にあった、「毒があたった」発言に、はげしく興をそそられたから、なんですね。前に読んだ、金井美恵子氏のエッセイの影響(→)も、たぶんにあるのだろうけれど。
桐野夏生さん新作「東京島」に4年の歳月
 http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20080603bk08.htm

 妻の壮絶な嫉妬に苦しむ夫を実体験を元に描いた島尾敏雄の『死の棘』を別の雑誌連載の関連で再読、その「毒にあたった」……

 云々。
 ほう。それほどまでのものなら、どれ、ためしに口にしてみようか。というかんじでつらつらと読みはじめて――まあ、こちらも「毒にあたった」か否かの判断は、いまのところつきかねているのですが(「毒」というよりも「魔」といったほうが近い気がする)、結局、この前出たばかりの『「死の棘」日記』(新潮文庫)の方も、買ってしまいました。『死の棘』を読み終えた時点で。ぜんぜん、買う予定には入ってなかったんだけれどなあ。
 まあ、正直、慣れしたしみたい世界、ではないっす。それに、ここから、なにかを学び取る、というのも、ずいぶんとおこがましい気がする。「毒にあたった」という桐野氏のいいまわしを敷衍するのであれば、ようするに、「毒を食らわば皿まで」ということに……なるんだろうな。きっと。(失礼か?)ここまで一緒につきあったのだもの、もうしばらく、つきあってみよう、といった、運命共同体メンバーへの思いと似たようなものも、生まれつつあるのかもしれない。
 ただ、いまからすぐに読みはじめるというのは、けっこうつらいものがあります。クールダウンをしないと。
 再読しても、やっぱり、インパクトが強かったのは、あの、夫の浮気相手が家にやってくるシーンで……筋(というのかなんというのか)は知っていても、文字を目で追いながら、胸がどきどきしてしまう。というような態度では、『死の棘』の理解はまだまだぜんぜん足りないってこと?