『2階で子どもを走らせるなっ!』読了

 副題・近隣トラブルは「感情公害」。橋本典久著。光文社新書。2008年。なるほど。と、決して近所における煩音問題とは無関係ではいられない身としては、いろんなところで感心しながら読み進めておりました。あ、現在、階下がピアノ教室というところに住んでいますので。このタイトルに倣えば『夜9時以降はピアノを鳴らすなっ!』ということにもなるのですが。まあそれはともかく。
 騒音と煩音は違うという記載。

 騒音とは、不快に感じる音、聞きたくない音のことである。では、煩音はどうかと言えば、定義は同じである。ただし、騒音の場合にはその前に「生理的に」が付き、煩音の場合には「心理的に」が付く。もちろん、騒音と煩音が明確に区別されるわけではないが、より要素的に大きなものということで見極めればよいであろう。ちなみに、一般的に騒音問題の解決に必要なものは騒音の軽減であり、煩音問題で必要なものは、相手からの誠意ある対応である。

 なるほど。つまりは、ピアノの音というのは、いわゆる「騒音」ではなく、「煩音」なのだね。勉強になるなあ……。と、いう具合に、感心し続けてしていると、少なくとも――すいません、ここを読んでいるひとにはなんのうらみもないのだけれど――むやみやたらな怒りというものからは、解放されます。あ、話し合いは、したんですけれどもね。引っ越してくる前に。管理組合のひとと共に。でも、駄目。ああ、つまりは、これも感情公害?
 で、とうぜん、向こうのピアノ教師側にも、それ相応のいい分はあるのだろうということは、理解できるわけです。なんて神経質な。とかね。そこで登場すべきが、この本で、一番熱心に提唱されている、日本でも(アメリカみたいに)「近隣トラブルセンター」を作ろうよ、というはなし。いいですねえ。やっぱり、訓練を受けたプロの元で、適切に話し合いを積み重ねれば、トラブルの解決は図れるだろう……という風に、夢を抱きそうにもなるのだけれど――またあやまりますが――すいません、この本で提示されていた、犬の鳴き声のトラブルの解決例を読んだ限りでは、うーん……これは、はたして「解決」といえるのだろうか? と、いささか首をかしげてしまったのも事実なのです。フィクショナルに過ぎるのではなかろうか? 詳細は書きませんが。クイズ形式になっていたので。
 かといって、法的に規制してくれー! というのも……そう望まないでもないでもない、というところも、正直、なくはないのだけれど……むつかしいなあ。まあ、こうした本が出るということじたいが、なんらかの前進の兆しには他ならないわけで。そこは、すなおに、慶賀の念を呈すべきではありますね。(近隣トラブル解決)関係者の方々、がんばってください。ほんとに。応援してます。