しをん氏の鼎談を聞いてきた

 男性ふたりに挟まれて、どちらにも差がないようにと均等に肯いてみせる三浦しをん氏の首の動きにまずは感嘆。公開鼎談の真ん中に配置されるひとって、けっこうたいへんなんですね。テニスのラリーを見てるひとのよう。「ねるとん紅鯨団」に来た女性ゲストが、石橋の方にばかり肯いているのをはらはらしながら見ていた気持ちを思い出してました。古い話で恐縮ですが。木梨の方にも肯いてやれよー、とか心配したりしてね。
 服装はというと、なんていうんでしょうね、あの、舞台映えする「赤」の名称は? 緋色? とにもかくにも、羽織っている黒い上着とのコントラスト(特に光沢)が絶妙で、ナイスチョイス、とここでも感嘆。スタイリストの存在があったのだとしても――ないとは思うけれど――着こなしているのは三浦しをん氏の技術ですからね。いいんです。褒めても。とはいいつつ、共立女子大の地下の教室は満員御礼状態。隣の男性の体臭まで嗅ぎ取れるような始末。(男女比は4:6くらい。)わりに、余裕を持って行ったつもりが、結局は、後ろから2番目の席の落ち着くという屈辱を甘んじて受け入れたという次第。……というわけで、正直、よく見えなかったんですよねー。三浦しをん氏の服装。残念至極。チャーミングなオーラだけはばっちり感受しましたが。声も聞けましたし。バイト先の古本屋に来たじーさんのものまねをするところなど、なるほどなあ、憑依芸に長けてるひとは文章だけでなく喋りでもその能力を遺憾なく発揮できるんだなあ。とここでも感嘆。 
 まあ今回の目的は、生の三浦しをんを見る、という1点のみにあったわけだから、はっきりいって、他のふたりの男性の喋りの際には、かなり集中のレベルを落としてました。だって、文楽の話から、いきなり塩野七生へと移行する、その飛躍力にはちょっとついていけない……。あらかじめ台本があったのだとしても、流れとしてねえ、どうなんだろ……。←というような、ネガティブな感想は、極力自分の心の内のみに収めておく方が、発展性という視点からしていいのではないか、という三浦しをん氏の話でもって、11月2日の神保町ブックフェスティバルでのセミナーは無事に幕を閉じたのでした。(あ、その後に、作家にとって大切なのは「客観性」ではないかというのもありましたが。)
 うん、全体に楽しかったっすよ。特に、「本好きな子がいい子とは限らないし」といった三浦しをん氏の指摘には、すばらしいものがありました。(何せ、この日のテーマは「読むって楽しい」だし。)実物を見て、がっかりすることになったら怖いなーと心配していたのですが、結局は、逆に終わりましたね。推薦本リストに挙げられていた『信仰が人を殺すとき』『神聖喜劇』『飛ぶ教室』等にも、食指が蠢く。って、もしかすると、三浦氏の『三四郎はそれから門を出た』というブックガイド集でも取り上げられているのでしょうか?