『きみはポラリス』読了

 いいっすね。慕情をテーマにした全11短編を括るタイトルとして、秀逸。三浦しをん著。2007年。新潮社。はっきりいって、恋の異形(←他にいいことばが思いつかなかったのだけれど)の醸し出す緊張感は、そうだなあ、ぬるま湯に浸かってて、急にわきからからだのいちぶぶんを冷水(もしくは温水)に晒されたときの心地よさに似通っているような。つまりは、はっきりと、好みである、と。某所で、この小説が、岡崎京子の世界と相通じるものがある(しかし最後で微妙にずらされている)という感想に触れ、以来興味を募らせていたのだけれど——なるほど、収録作「私たちがしたこと」という短編における作中暴力というのは、似てるかな? というか、もし岡崎京子でなら、たぶんラストで……オチの濃度がもっとこう、断絶、といった風に近づいていたような。いや、これこそ個人的感想で。第3篇「夜にあふれるもの」とか、同じテーマで、長編で繰り広げられたのも読んでみたいなあとも思いますね。嗜好として。ここでのファナティックの描写は、音楽のように、重奏感でかなり来る。