『桃色トワイライト』読了

 ところで今年はふたたび図書館利用に回帰する予定であります。買いたい本と、読みたい本とは、自分の中で必ずしも合致しない——いやいや、まあその……できることと、やりたいこととの比率は、もしかするとこれらとかなり似通っているのかもしれないなあ(義務と欲求のあんばいが)、などとどさくさまぎれに思いつつ、先に進めます。
 その図書館回帰の第1弾。三浦しをん著。2005年。太田出版刊。これはもう、ラブリーのひとことでしょう。フルーツパフェを前に、桜のかんむりをかぶった縦ロールの和装美少女が、ほおずえをついて、こちらに微笑んでいる。かたわらにはブチ猫がうずくまっていて、靴下はみごとに小豆と橙の色ちがい、表紙全体の基調はとうぜんピンク。といった松苗あけみのイラストにノックアウトされない乙女心の持ち主がいたとしたら、それこそ天然記念物なみというかなんというか。まあこちらに正統の乙女心がそなわっているのか否かはおいておいて。
 内容は、いつもの、好エッセイっすね。いや、ほんとにこの本は前々から読みたくて読みたくて読みたくてたまらなかったから、じっさいに読み終えることができて感無量……。その、若干のつかれ具合も、いまのこちらの気分とマッチしていてぞんぶんに楽しめました。スピード感があって、気持ちいい。いちおう、これまで読んだ三浦しをん氏のエッセイでは、前作『乙女なげやり』が自分のなかでは極北、という位置付けになっていたので、その勢いを頭の隅に置きつつ読んだがためになおいっそうのよい味を噛みしめることができたのではないかと、ぼんやりと思っております。
 語彙が、豊富っすよね。豊富というか……「満漢全席」なんて言葉、この本ではじめて知りましたよ。