よしながふみ『大奥』を巡る様々な意見:このマンガを読め! (2006)より

……『大奥』は久しぶりに凄い!と思わせる作品でした。
これを沢山売って色んな人に知って貰おうと思い恐ろしい量仕入れたんですが、
それがほぼ売れてしまったことに驚きました。
――渋谷孝 ブックファースト渋谷店

ふーむ。いい話です。
自分の好きなマンガを他の人も同じように評価しているのを見ると何となしに心がなごみます。
が、同時にこのような意見も。

『大奥』はやや設定に無理がある(4対1くらいの人口比ではまだ男女の逆転は起こらないと思える)が、今後の展開に期待。
――藤本由香里 編集者・評論家

ふーむ。なるほど。シビアですね。
そしてまた、このような意見も。
(『大奥』ではなく「よしながふみ」についてだけど。)

よしながふみのマンガの白っぽい「間」が好きです。
うまい。食べ物のことを描いてもエロい。
この作者はセックス(マンガでセックスを描くことではなく、実際にするセックス)も、上手なのではなかろうか。
――二村ヒトシ AV監督

……なんと言うか。でも、個人的に注目に値する意見でありました。

吉本さんの本のことをあれこれ言っているおじさんたちはみんなピントがずれている。
なんか、セックスが下手そう、って感じ。
いつも何かが世の中に広く行き渡るときは、ちょうど川の水の中に手足を入れると少しゆがんで見えるように、
微妙にずれてしまうように思う。

上、デビュー当時の吉本ばなな岡崎京子が出した手紙(翻案)より。(『ばななブレイク (幻冬舎文庫)』からの抜粋。)
この文脈で行くと、おそらく二村ヒトシは、よしながふみを作家として絶賛しているのだろうけれど、
意外に、職業的勘で“本質”を捉えているのかもしれない、とちょっと思いました。