針と眼球

 小学館文庫版、中上健次の「重力の都」を読んでたら、いきなり愛欲の果てに男が女の両目を針で突くシーンが出て来て割に驚く。おっとっとっとっと。よかったよひとまえで読んでなくて。思わず声出ちゃったもん。あ、そうかこれって谷崎の「春琴抄」へのオマージュなんだな、みたいな冷静な声ではなく、純粋に「やめてくれよー」みたいなフィジカルな共鳴による喃語。目はねー、痛いよねー、やっぱー。本家「春琴抄」における佐助が春琴にヤられるシーンでさえとても耐えられるものではなかったし。(しかもこちらは思い切り佐助側から語られてるし。)筒井康隆にもあったね。警察官に目をカミソリで切られるシーンが。あわわわわ。中学校の時、「目の手術の際には直接眼球に注射をするんだよ」てな情報を嬉々として伝えてきた同級生の顔をも思い出すよ。サドか。それとも、あれは彼なりの、ぼくへの愛情表現だったのか?