やみくろ

 笙野頼子「水晶内制度」を読み、ようやくぼくは古事記がどういう話なのかを知ったよ。知ったというか、単にイザナギイザナミが黄泉の国でどういう行いをしてたかってことなんだけど。有名、なんだよね? だって神話なんだし。上記「水晶内制度」では、その神話の大胆な書き換えがなされてて(というか、今読んでる箇所ではなされてつつあって)、あちゃー、こんなおもしろくていいのかーといささか戸惑っているだけれど――に、しても、むかし丸谷才一村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を指し、「あれって古事記だよね」と言ってたことが今さらのように思い出される。当時は何を言ってるのかさっぱりわからなかったよ。でも、要するに、主人公が地下に行くところと黄泉の国に行くところが重なってるってわけなんだよね? なるほどー。でも、とすると、「ハードボイルド・ワンダーランド」に出て来るやみくろって、古事記におけるイザナミに相当するんじゃないかともちらと思った。死んでぐちゃぐちゃになり夫のイザナギを迎えるイザナミ。つまりは、やみくろって、女性なのかな?
(そういや、高橋留美子の「人魚の森」に出て来るなりそこないは、これははっきりと、女性だったね。地下の話でもあるし。)