川本三郎「美しい映画になら微笑むがよい」*8

 著者はガイドと批評は別物だという。ガイドとは、あくまで商品情報、対する批評とは、

一本の映画のなかに深く入り込み、丁寧に味わい、その作品を理解することである。感動した映画の、その感動の源を掘り下げることである。

 このことば通り、全編、優れた映画評だと思う。ほとんどが、実際に映画のパンフレットで使われたせいで、読み易いし、なにより、きちんとした内容紹介になっている。川本三郎は、これらの文で、主語に「私」を入れてないから、読む方も、変な温度を感じることなく、すっと入り混むことができるのだ。そして、中国・韓国の監督へのインタビュー。ぼくは、今まで、彼らの映画への興味はなかったのだが、これからは積極的にチェックしていこうと思わされた。特に、ジャ・ジャンクー。70年生まれ。「一瞬の夢」の監督。「1989年を通ってきたいまの若者で、あの事件に影響を受けなかった者はいません」。あの事件とは、もちろん、天安門事件。この一言で、なんだか妙に彼らとの距離が縮んだ気がしたのです。