長谷川町子「サザエさんうちあけ話・似たもの一家」*1

 のらくろの作者、田川水泡の妻は、小林秀雄の妹だとか。だから、自然、田川宅に弟子入りしていた長谷川町子は、小林秀雄と顔を合わせていたらしい。長谷川町子小林秀雄か。すごい組み合わせだなあ。ちょっと興奮。にしても、なんて長谷川町子は文章が上手いんだろう。酒井順子が羨ましがるのも道理。(彼女のすすめで手にとったのだ。)この本には、かなりたくさんの死が出てきて、粛然とするけれど、それでいて、きちんとおもしろく読める。たしか酒井順子はそんな筆致を「ストイック(もしくはそれに類する言葉)」と評していたような。商売繁盛記としても一級品。そりゃ、「いじわるばあさん」読み切りで発表したら、雑誌の方が放っておかないよな。家族の物語としても優れているし(母親の豪快なキャラクターが最高)、かなり深く楽しめる。読み終えた今、過ぎ去ったものを思って、なんだか切ない。