第一の読書

 吉田修一の「東京湾景」が次回の月9(なんてもう言わないか)ドラマの原作に選ばれたとか。ふーん。よかったね吉田くん。と素直に思う。これで一躍全国に名が知れ渡るね。もちろん、「芥川賞作家」ということで、その筋に興味があるひとには十分馴染み深い名なのだろうけど、まだまだ、お茶の間への浸透度を考えると。というわけで、嵐の前の静けさ(になるのか)を惜しみつつ、新刊「長崎乱楽坂」を手に取る。
 一読して思う。うわあ。ブンガク、だなあ。「新潮」連載だもんね。当然か。けれどもきちんと現代風にアレンジされてる箇所もあり。最後、主人公の三村駿くんが全然無気力になっちゃうところなんて、やはり今の時代を反映してる、と捉えられても不思議はないでしょう。その原因はどこにあるか、ってな議論はナンセンスとしても、ここに出てくる成人たちの所行が関与してないとは決して言えんし。対して、弟の悠太はこの物語の主人公にはなれなかったろうね。少なくとも今(つまりは最終話の大学3年まで)の段階では。あまりに健全すぎる。
 にしても、この小説、なんかゲイ色濃くないか。橋本治漱石の「こころ」を「同性愛小説」と喝破したけど、ちょっとこの本も読ませてみたいな。どんな反応するか。自殺した哲也くんはやたらと男性の裸ばかり描いてたし、主人公の駿くんだって中学生のとき同級生の少年に抱きついてるし。白い尻、って記載、一瞬、駿くんか梨花さんのかわからなかったよ。最後の「焔」は何を暗示してたのでしょうか。うむむ。(こんなことがピックアップされないことを深く望む。)
 ところで、日常生活で「う、うそ」とか「ちょ、ちょっと待って」っていうひとっておたくなんだってね。安野モヨコが「監督不行届」で自分の夫(庵野秀明)にそう言わせてた。とすると、吉田修一もおたくってことになるのか。やはり、多いと思いました、「な、なんで」というかたちのどもり文。正直気になる。