振興住宅地に育った自分を安部公房になぞらえるセンス

 会田誠少年の趣味はストリーキング、女装、道に落ちているガムを拾って「うめぇ〜」と言って食べること、だったそうな。加えて、下水に流れている水を「ああ、喉が渇いた」と言って飲んでたとか。うーん。どこまでが本当か。案外「全部ほんとにきまってんだろ」なんてオチになりそうな気がしてちょっと怖い。
 にしても、おもしろかったなあ「プリンツ21」特集・会田誠。この雑誌ではじめて「巨大フジ隊員vsキングギドラ」のヘルメットに「似てねーよ」とのコメントが記されているのを知る。確かに似てない。しかし、この自分で自分にツッコミ。いいセンスをしてるよ。人気稼業にはこれがないとな。
 他にも、成人してからの女装写真のキャプションに「地毛を使っている分だけ森村泰昌より感情移入が激しいといえる」なんて文字が。ああ、くだらん。でもこのくだらなさが現代アートってやつなんすか? だとしたら思い切り支持したい気分だ。
 日常でも結婚披露宴を谷中墓地で行ったりね。まあそのくらいなら一般人でもやるか。けれども、特集の最後に載ってる家族写真、四つん這いになった会田誠の背中に妻と子が座るの図。こ、これはちょっと。全員がフォーマルな服装でバチッと決めてるだけあってかなり異常だ。まさに変態極まれり。かっこいいぜよ。

 子供の頃から、本来人が住むべき場所でない砂丘に無理矢理家を建てた地区で育った。それで最近ふと思ったんですが、ぼくのメンテリティって、案外満州育ちの安部公房と近いんじゃないかと。知性教養の量は度外視したとして。『砂の女』の永久にさらさらと動き続ける乾いた砂のイメージ、大地に根が下ろせない感覚とか。田舎育ちのくせに現代的な無機質で冷たい人間阻害の感覚とか・・・。

会田誠を読み解く12のキーワード」<新潟市>より。