普段と変わらない朝。電車の中でよしもとばななの「High and dry(はつ恋)」を読む。いいなあ、初恋のひととデートできるなんて。ここに載っている絵には正直あまり惹かれなかったのだけれど(水森亜土の絵かと思った)、でも、対象読者たるローティーンにはまさにドンピシャなのだろう。心地良い読後感に酔う。そんな折、とつぜん電車が止まる。「高田馬場駅で信号機故障が発生し」云々のアナウンスが流れる。まあ、よかった。人身事故じゃなくて。とほっとしたのはいいが、その後待つこと7分間。(新聞には7分と書かれていたが、アナウンスでは9分の遅れと言っていた。)人もまばらな車両で、誰も口を聞かない。しかもその場は晴天の地上ではなく漆黒の地下。圧迫感はかなりのものだった。繰り返し「高田馬場駅で信号機故障が発生し」のアナウンスが流れ、その繰り返しにややいらだちを感じ始めた頃、ようやく電車は動き出す。暴動が生じないでよかった。
 午後3時頃、同僚の女性にこんなことを訊かれる。「ねえ、『冬ソナ』って見てる?」「いや、さすがにそこまでは押さえてないけど」。答えると、「へえ、なんかTさんNHK好きそうだけどねえ」と笑いながら言われる。一体どういう意味だったのだろう。ところで、先週の週刊新潮岩井志麻子が「(同じ韓国人俳優なら)私はペ・ヨンジュンよりもチャン・ドンゴンの方が好き。なぜなら、チャンの方が精液が濃そうだから」と語っている。顔は未見なのだが、なるほど、チャン・ドンゴンなる名前、確かにペよりも精液が濃そうだなあと深く感心した次第。*1
 帰りの電車で橋爪大三郎「はじめての構造主義」を読み出す。シニフィアンシニフィエだの、一介の勤め人にはあまり関係がなさそうな話題が続き、さてこの後読み進めようか、どうしようか、と悩んでいたところ、「インセスト・タブー」、つまり「近親相姦の禁忌」のテーマに突入、にわかに寝惚けていた脳が目覚める。つくづく生臭い人間だなあ、俺は、と思う。

*1:しかし、よくよく思い返してみれば、「ブラザーフッド」のポスターでウォンビンの隣にいたのはこのチャン・ドンゴンなのだった。というわけで「未見」というのは誤り。