「叶えられた祈り」

 秋公開の「カポーティ」に向けて、新潮文庫が続々と放っている関連本の1冊。つーか、これは映画で扱われている「冷血」の後日談に属する作として捕らえるべきなのかな? トルーマン・カポーティの未完の遺作。待ってましたよ刊行を。長らく絶版状態だったんだものな。表紙の「ナイトホークス」(エドワード・ホッパー)もいい具合。あまり芳しき評判を聞かなかった割には(だからこそと言うべきか)へーっ、へーっと感心しながら読み進められることが出来ました。全篇リッチアンドフェイマスのゴシップづくめ。そこに描かれている登場人物の名など(ジャッキーとサリンジャー以外)誰ひとり知らないのにもかかわらず興を持って読めたというのは、ひとえにカポーティの筆力の賜物? 比喩のデパートっつーか、<何人もの汗にまみれたスワヒリ人に乱暴されている宣教師みたい>なんて文章のオンパレードに酔わされる酔わされる。山田詠美が、吉田修一の「最後の息子」を評した際に書いた言葉<とても、キュートだと思いました。人の見くびり方に品がある感じ>というのを思い出した。
 でも、この作品を世に出したことで、モデルのひとりが自殺しちゃってるんだよね。うーん、この「でも」の使い方は間違っているかな?