眺めるタイトル

ヒッチコックトリュフォー」を読んでると、内容はもとより、それに付けられた魅力的なタイトルについつい興奮してしまうんだ。
<悪魔さながらの角のように堅い手>だの、<悪役がうまく描かれていなければ映画は成功しない>だの、<キム・ノヴァクはノーブラを誇りにしていた>だの、<なぜ鳥が人間を襲うのか>だの、うーん、うまいもんだよなあ。
 もちろん、語り手がヒッチコックだからこその成り立ち得るタイトルなんだろうけれど、ピンで取り出したとしても、ぞんぶんに、イメージの喚起力はあるよね。 
 そこで思い出したのが、「カラマーゾフの兄弟」第12編、第9章における<全速力の心理分析。ひた走るトロイカ。論告の結語>ってタイトル。(新潮文庫。)この字面を見ているだけで、なにかこう、心の底から震えるような興奮を覚えるのって、果たしてぼくだけなのかな?
 ついでに言うと、てんとう虫コミックスドラえもん」28巻の第5話における<ポカリ=百円>(ぽかりいこーるひゃくえん)というタイトルも、自分の中では、かなり上位に位置している。「ポカリ」というのは、決して清涼飲料のあれのことではないよ。念のため。げんこつの「ポカリ」だ。もし、「今まで見た中で好きなタイトルを挙げよ」なんてアンケートがあったら、間違いなくこの「ポカリ=百円」を挙げるな。まあ、ちょっとインプリンティング効果が怪しまれるところではあるけれど、それでも。
 そもそも、「ドラえもん」って、子ども心に、目次を眺めているだけでも楽しめる作品ではあったよね。(マンガってのはみんなそうなのかな?)そうそう、前に、「ドラえもん」の道具を使ったトリビュートマンガってのは目にしたことがあるけれど、誰か、「ドラえもん」の各タイトルを使ったトリビュートってのを企画してくれないかな? もちろん、内容は元のとは全然違っててもいいって奴で。駄目かな? けっこう、心ひかれるものがあるけどなあ。
付記:実物に触れたことはないのだけれど、「ロシアから愛をこめて」「女王陛下の007」ってタイトルにも、なにか妙に吸引力を感じるね。