青春の終わり

 2001年9月7日、図書新聞掲載。つまり、5年前の文章だね。書き手は詩人の田口犬男
 当時は、この文章に、ものすごくシンパシー、というか、ある種の救いを見出してたんだ。書かれた内容はもちろん、これが、自分ではなく他人の手で書かれたということに対して。

 ある晩、仕事帰りのくたくたに疲れた体で、わたしは駅のプラットフォームを歩いていました。すると突然、どういう訳かLife is better, not sweet. という英語のフレーズが浮かんできたのです。その瞬間、わたしは強烈な覚醒感に襲われました。なるほど自分は、うまく物事の運ばない訳を、外部的な理由か偶然か、自分の努力の足りないせいだと漠然と考えていたが、本当ははそうではない。人生というのは、もともと上手くいかないものなのだ。それが人生なのだ。わたしはそのような事を、一瞬で理解しました。すると不思議なことに、確かに舌の上が「苦い」のです。それは気のせいなのではありませんでした。わたしはその苦さを噛みしめながら、「ああ、自分の青春は終わったのだ」とゆっくり考えました。

 青春は終わり、そして人生が始まる。でも、切ない感情だけは、どうしたって残るもんね。(やや食い過ぎのためセンチメンタル。)