「一、二、三、死、今日を生きよう! 成田参拝」読了

 あ、ごめん。この時期に「死」の字は忌み言葉っすよね……。でも、ちょうど読み終えたので。忘れぬうちに。笙野頼子著。短編集。上の標題はふたつのタイトルを掛け合わせたもの。つまり「成田参拝」と「一、二、三、死、今日を生きよう!」の合体型。ぼくははじめこの標題にひじょうにユニークな匂いをかぎ取ってて勝手に愉快がってたのだけれど、特に「一、二、三、死」を読み始めた途端、その勘違いを恥じるようになった。ユニーク……。うーん、ある意味ユニーク。とはけして言えないなあ。「成田参拝」にはちょっとだけその香りがあるのだけれど。後者については。ある出来事に端を発する主人公のせっぱ詰まり具合に、わりに既視感があったりして、現在の自分の根拠なき鈍さがかなり不思議なものに思えてしまった。ふつう、ああしたせっぱ詰まり具合は文字にしにくいものなのにな。すらすら読めた。すごい。というのは、内容そしてそれへの距離感を示す。「業(ごう)」という語が、本書では一回出て来て、ここでも使えるのかなと一瞬思いつつ、やっぱり止めておこう。外から言っていい言葉じゃないしな。