「松ヶ根乱射事件」

 ほう。僕も「乱射」をしてみたい――なんて、月並みなことは言いません。つい言いそうにはなるけれど。それよりも、何よりも、この映画の眼目は、やっぱりこのタイトルでしょう。「松ヶ根乱射事件」。漢字7つにひとめ惚れ、です。駄目な親父に駄目な兄貴。その二重苦にあえぐ巡査役の新井浩文くんは、それこそ月並みではあるけれど、とてつもなく不気味な味わいでよかったです。うじうじしている双子の兄貴、山中崇くんとの脚を使った戯れ具合は、なかなかにこちらのツボに入る仕草でしたよ。木村祐一氏の恋人、川越美和さんも、しょっぱなから全裸を出しちゃってまあ。というレベルでは収まりきらない笑いを全編で振りまいてくれて、ああ、いいリズム感の持ち主だなあと感心した次第であります。「抜いちゃ駄目ーっ!」――うん、そりゃそうだ。抜いちゃ、思い切り、駄目だよなあ。と(映画を見た人には判る)あの声がいつまでも頭から離れない……。