「カタコトのうわごと」新装版

 んん。週末に、丸善本店ふきんをほっつき歩いていたのだけれど、金井美恵子の「楽しみと日々」は入手できませんでしたよ。かなしいな。かわりに――といったら何だけれど――多和田葉子の「カタコトのうわごと」新装版が並んでいたので、よろこんでカゴに入れて来たという次第。ずっと、「エクソフォニー」で言及されていたツェラン論を読んでみたかったのに、絶版だったからね。ふむふむ。って、どちらかというと、かんじんなツェラン論には、馬の耳に念仏というか(そもそも多和田葉子の本の中でしかこの「ツェラン」の名に触れたことがない)、あまり心躍らされることはなかった……というのが正直なところで。ドイツ文学が好きなひとには、それこそ垂涎のネタなのかな? 自分としては、やっぱり、「エクソフォニー」での基本テーマ、<二ヶ国語の間の峡間そのものが大切>の萌芽が見られただけで、もう、じゅうぶんすぎるほど満足。くわえて、ああ、サンプリングってこういうことをいうのか、と、目から鱗をぽろぽろ落とされた「異界の目」なる文章に触れられて二重丸。さらには、旧版よりもよりいっそうしぶくなっているミルキィ・イソベの装丁に、個人的に三重丸。