『双調平家物語』読了

 まずは、「パチパチパチ」と醒井凉子さん張りに著者の橋本治氏の労をねぎらいたい気持ちでいっぱいです。全15巻。ご苦労様でございました。第1巻の奥付を見ると、初版が1998年10月となっているから、足掛け10年の作だったのですね。中央公論社前会長・嶋中鵬二氏も、草葉の陰で、目頭を熱くなさっていることでしょう。とかいって、ぼくなんか、今年になって新たに参入した読者だから、ここでちゃっかり「ご苦労様」云々なんていう資格はないのかもしれないのだけれどね。
 いやー、それにしても、たくさん人が死んだなあ……。というつぶやきもかなりにまぬけなものだけれど、じっさい、死にまくるんだ。ばさばさばさばさ。男も女も。老いも若きも。数えてればよかった。平穏に死んだ人って、果たしてここでいたかしら? 今のところ、鮮烈に印象に残っているのは、平清盛のそれで、最終直前での出番だからよけいに印象が強いというのもあるのだろうとは思いつつ、あんなところで死ぬのは悔しかったろうなあと、思い切りこちらにシンパシーを与えたのがその因ではなかったかと。個人的には、このややこしい物語の中で、かなりにパーソナリティがわかりやすく描かれていたから、彼が出てくるとちょっとほっとする向きもあったのですが。ああ、あと、船岡山での義為の子供たちの運命は、悲痛極まりなかったっすねえ……。全巻の中で、いちばん涙腺を刺激する場所だったかもしれません。
 諸行無常。うーん、諸行無常ねえ……。全巻を読み終えてみて——哀しい描写にはもちろん溢れていたのだけれど——そういう、寂寞とした気持ちに陥ることは、正直、なかったかな。身に染みてない? というか、はっきりと、これは「終わってないんだ」と思いました。続いてるんだ。今もなお。