浸透

 入院している祖父を見舞いに行ったら、「今度、となりの部屋に市長がやって来るらしい」と言う。ふーん。いわゆる視察ってやつなのか。それとも実際に病気なのか。などと、どういう文脈であるにせよ、市長が病院にやって来るという図に、(その違和感に)すなおに感心をしていたのだけれど、すぐにそれは「市長」ではなく看護師長の「師長」だということに気がつく。おおよそ2年前の話。無論祖父も、看護師たちが話すのを耳にして、「市長」のつもりでつかっていたのだ。
 今ではあのころよりも「師長」という言葉は順当に市民権を得ているのだろうか。メディア等の影響なのか、これを打っている現時点においても、「師長」よりも「婦長」の方が(個人的には)その像をヴィヴィッドに描き易いという面がなきにしもあらず、という気がしないでもないのだけれど。単純に、その語の使用期間とイメージの浸透度が比例しているというだけの話なのだろうか。というか、これと似たような場面が、もしかすると日本の病院の至るところで展開されている(もしくは「いた」)のだろうか。
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 祝賀すべき連載100回記念にわざわざ「百苦タイマー」ってのを持ってくるセンスは、よくよく考えるとかなりに意味深だけど、けっして嫌いじゃないっす(→)。というか、むしろそういうところが和音になって、今となっても生き続けられているのかも。