「シンセミア」は確かに面白かったけど、共感てのとはまた違うし

 まあお笑いぐさだと思うけど、恋に落ちるってこういう感じだなって具合に、惚れ込みましたね、星野智幸「ロンリー・ハーツ・キラー」(ISBN:4120034860)。もう今週はこの一冊でバッチリきめられた。乗り切れましたよ。どこがいいんだろうってつくづく考え、要するに、「ここには俺のことが書かれてる!」って激しく思えたからでしょうか。まあ天皇にもビデオカメラにも今んとこ興味はないけれど、それでも。
 出だしからして、これだ。

 オカミが死んだときでも、俺はポキッと折れたりしなかった。

 わー。もう、まいったなあ。わかる人にはわかる、と思う。この「たまらん」感。いや、実際楽しみだなあ。他の人がこの本をどう評するか。

 はっきり言って、俺は社会に参加して生きている実感がない。(略)俺を生かしているのは自分じゃなくて、この社会の余力だ。どうやって貯めたかは知らないが、社会がかつて蓄えたカネとエネルギーを食いつぶして、俺は生かされている。

 そうそ。この本に惚れ込んだ理由がもうひとつ。ラストが決して粗末でなく暗くもなくそのうえ平凡でもない点だ。結構キましたよ、私的にはね。