福田和也「晴れ時々戦争いつも読書とシネマ」*5

 日々の生活におもしろさを求めようとすれば、そこはやはり(批判はあろうとも)本や映画に頼らざるを得ない節がある。まさか年がら年中旅行に出られるような身分でもないのだし。だから、いきおい、雑誌やネットで繰り広げられる「これ、おもしろいよ」という情報に敏感になってしまうのだけれど(さらに、そうした「情報の提示法」にも、技としてのおもしろさを求めつつある)、そんな中、この「晴れ時々〜」は上質のナビゲーターだったと思う。週刊新潮連載当時、実際に影響を受けた行動は数知れない。水村美苗本格小説」に手を出したり、ニノ宮知子「のだめカンタービレ」に注目したり。丸谷才一「輝く日の宮」は、当初読む気満々だったのだけれど、ここでの評を目にして取り止めることにした。(これについては、正しい行いだったのか今となってはわからない。)逆に、矢作俊彦「ららら科學の子」を大絶賛していても、そこに、何やら尋常でない空気を嗅ぎとって、敬遠したという例もある。思えば、個人でこれ程までに影響力を持つのは、今のところ福田和也が最右翼かもしれない。最近も、彼の評で森美術館に行き「KUSAMATRIX展」を見たくらいだ。ひと昔前までは、あまりいい感情を抱いていなかったのだけれど、現実に、おもしろさを提供してくれているという点で、私は福田氏の仕事にたいへん感謝している。その「広がり具合」も含めて。