昼休みにて

 I君から「シェイクスピアとか読まれます?」といきなり話題を振られたので「いや、まあ、すすんで読んだりはしないけど」とあたりさわりのない答えを返したら「いやあ、あれ、めっちゃおもろいですねえ」となにやらずいぶん興奮気味だ。「映画は観たよ。ロミオとジュリエット。昔のやつ。ディカプリオが出てない方の」「ああ、あれもけっこういいですよね」「“早熟は衰えも早い”って台詞を覚えてるけど」(僕はこの台詞を松坂大輔と共に覚えている。)「そう、決め台詞が鋭いんですよ」このあと、I君は傷口に関するアフォリズムを披露する。一度も傷を受けたことのない者に限って・・・うんたらかんたら、という(忘れてしまった)。「けっこう戯曲とか読むの?」「読みますねえ」そこですかさず「宮藤官九郎は?」と尋ねたが、Iくんはあまり好みではないようだ。「吉祥寺で歩いてるとこよく見ますけど」「えーっ、それってすごくない?」「いや、べつにふつうですよ」「みんなサインとかねだったりしないの?」「しませんねえ」ついつい、ミーハー根性を爆発させてしまった。