柴崎友香「きょうのできごと」*14

 これを読んでまず感心したのが田中麗奈の演技力。ふつうの台詞が、彼女を通して表現されるとものすごくキュートになるという不思議。女優ってやはりものを作る仕事なんだなあと再認識した。と書くと、この小説に魅力がないかと思われるかも知れないけれどそんなことはない。ただ、いかんせん、映画を観てあと日を置かずに手を出してしまったので、どうしても印象は縛られ気味。小説独自のエピソードの箇所でさえ、容易に映像化されてしまうのだ。この小説自体に、起承転結がなく、それを今さら「新しい」なんていう気は更々なくて、単純に「いい作品だったなあ」と感想を抱く。