四元康祐「ゴールデンアワー」*2

 詩なんて私のいる世界とは絶対縁がないと思い込んでいたから、この本のおもしろさに満足しつつも、いや、このおもしろがり方ってけっこう本筋から激しくずれてんじゃない? と訝ったり。目次をぱらっとめくると「天才バカボン」に始まり「ゲゲゲの鬼太郎」「サザエさん」「あしたのジョー」に「鉄腕アトム」と、そう、つまり1959年生まれの著者がこれらポップアイドルにオマージュを捧げてる本なのだ。これじゃあ、つまらないわけないよなあと自身の資質に改めて慨嘆してるという次第。別に嘆くことないか。
 途中、犬が重要な役目で出てくる。くぅー、悲しい詩なんだこれがまた。聞きたいですか? でもなあ、これ題名が「おらは死んじまっただ」なんだよな。

 ♪おらは 死んじまっただ
  おらは 死んじまっただ
  天国に 行っただ

 に始まる、この本に収められてる最長の詩。ねえ、もう、ほんとに。詩としては多分にセンチメンタル過ぎる気はするけれど、いや、それでも、作者は抑えて書いてるんだろうな。というか、書かずにいられなかったんだろうな。こういう「同調」は、果たして詩という形式によるものなのかは判断付きづらいけれど、んなこたぁ、どうでもいいか。な。
 個人的に好きなのは浅間山荘を詠った虚構入り乱れてる詩。いいですね、滅茶苦茶で。あともちろん(作者も気にいられることを目して最後に据えたのだろう想像してる)タイトルポエムも。
 付言です。この四元さんて、ドイツ在住の“多忙な”ビジネスマンらしい。へぇ〜。「ドイツ」「59年生まれ」ということで私の頭では素直に60年生まれでドイツ在住の「多和田葉子」と結び付いてしまうのだけれど、この安直さをこそ嘆くべきだなといま少し反省。