橋本治「戦争のある世界」を読む

「ああでもなく こうでもなく」シリーズの4作目。しょっぱなから“「老い」とはギャグである”なんてフレーズに出くわし、もう、相変わらず笑わせてくれるな、橋本さんは。以前の本では、政治ネタを飛ばして読んでたのに、今回は通読できました。まあ今とも密接に繋がってる話題が多かったので。要するにアメリカとか小泉純一郎ネタなんだけど。それはともかく。この本は、作中にも出てくる、担当の白滝明央氏に捧げられている。確かまだ30代だったと思う。2003年5月、肺癌で逝去。(つまりその1周忌にこの本は出版されたわけだ。)そのエピソードで、橋本治は必死に「彼と会っても悲しみが顔に出ないように」理論武装をする。ウソをつくのは苦手だが、バカになるのは得意だ、などと言いながら。全てはシラタキ氏を苦しめたくないが為で、保身とは関係ない、こういう頭の使い方で本作はまるまる貫かれている。それは昨年の長崎で起きた中学生男子による4歳児殺傷事件の際にも発揮されてて(ひどい事件ではあるけれど、「心の闇」なんて言葉に対する違和感はやっぱりある)、こういう頭の使い方をするから、私は橋本治が好きなんだ。