村上春樹の「遠い太鼓」(講談社)を読む。村上春樹旅行記を手に取るのは今回がはじめて。まあ巷ではアテネオリンピックで盛り上がっていることだし、ちょっとギリシアの知識でも仕入れてみようかな、という訳で読んでみた次第。そう、これは村上春樹37−40歳にかけてのギリシア・イタリア滞在期。時期としてはちょうど「ノルウェイの森」と「ダンス・ダンス・ダンス」(懐かしいなあ)に当たる。はじめにギリシアの知識を仕入れようとしたのだけれど、案外、ギリシアってじみーな国なんだな。村上春樹自体が遺跡に興味のない人間らしいから仕方ないのかもしれないけど。印象に残ってるのは、天井が吹き抜けの映画館のことくらいか。あと村上夫妻が足留めを喰らった大嵐のこととか。かといって、後半部のイタリアは、あまり村上春樹とは肌が合ってなかったような気もする。郵送の不具合や犯罪事情(主にスリ・置き引き)に真剣に怒っているし。ただ、彼の地でぽんっと車を一台買えちゃったりするのは素直に「いいなあ」と思う。それと、ジャズやクラシックのコンサートの話はかなり羨ましい。そもそも旅行とはあまり(いや全然)縁の無い生活を送っているので、この手の本を読むのはどうなんだろうと思っていたのだが、けっこう楽しめた。もちろん、村上春樹の文才に依る所が大きいのだろうけれど。これを機に、他のムラカミ旅行記(「雨天炎天」とか)にも目を通してみようかと現在思案中。ま、暇があったらってことで。