「その名」2、谷崎賞

■仕事をたんたんとこなして、6時には退社。その後、いろいろと寄る予定があったのだが、体調が優れず断念。家でぱらぱらとジュンパ・ラヒリ「その名にちなんで」(新潮社)の続きを読む。主人公のゴーゴリは、これでもう4人もの女性とつきあっている。どれも相応に魅力的だけれど、あまり芳しい結末は迎えていない。ふむ。かわいそうだなあと同情しつつ、ここに改名(現在のゴーゴリは“ニキル”と呼ばれている)とアイデンティティの問題を絡めるのはあまりに浅薄か。
■「その名にちなんで」、背表紙に堀江敏幸が推薦文を寄せている。いわく。<なんということだろう。ラヒリの世界はもう完成の域に達し、あとはただその成熟を見守っていけばいいのだとばかり思っていたのに、本書を通じて、彼女は予想を超える深化を遂げていたのだ――驚くほど静かに、驚くほど自然に。>なるほど。静かに、自然に、か。まさにその通りだ。ラヒリの前作「停電の夜に」の背表紙にも堀江敏幸は文を寄せていて、そちらにはあまり同調することはなかったのだけれど、こちらには思い切り賛同する。ところで、今朝知った「堀江敏幸 谷崎潤一郎賞受賞」のニュースにピクリとも反応しないのはどうしてなんだろう。ニュースにまつわる“意外性”が皆無だからか。