橋口亮輔「無限の荒野で君と出会う日」

無限の荒野で君と出会う日
 エッセイ集です。橋口監督といえば、どうしても「ゲイ」という要素がピックアップされがちだけれど、そういうこととは関係なく、同時代を生きる人間として深く共感できます。まあつまり、映画を観ててもわかるように、橋口監督、人としてまともだってこと。彼の好き嫌い、というか、何に対して敬意を抱き、何に対して怒りを抱くかの基準に信頼がおけるというか。確かに、目の前に「ぼくって才能あるんです」なんてのたまう青二才に立たれたら、そりゃあ言葉を失うだろうなあ。
ハッシュ! [DVD]
 個人的に、アムステルダムでの多種多様な家族スタイルに興味しんしん。映画「ハッシュ!」のモデルとなった家族も出て来ます。男性2人に女性1人、そして、彼らとの間に生まれた女の子……。「あなたは、父親になる目をしている」ってセリフ、この人たちから取られたんですね。映画では、子供を作ったかどうかは微妙にぼやかされていますが。まあ、それも、さもありなんといった趣なきにしもあらず。なんといっても、現実での彼らのその後は、かなりにややこしくて――女性は、先の女の子の父親とは違う男性と子供を作り、それから、同姓のパートナーを得、現在、子供を入れて合計6人で暮らしている、とのこと――。すごいなあ。何が彼らを突き動かしているのだろう。といいつつ、わからないっすよね。数年後の日本でも、こうした事態がふつうに起こっているのかもしれないし。