アッコちゃんの時代

まずはナンシー関の「聞いて極楽」(ISBN:4022612339)P.72より抜粋。

数年前から、私の周辺で「A子(もしくはアッ子)という女性(現在二十六歳ぐらい)のことが話題になっている。この女性は十代にして最上恒産の愛人の座をゲット。当時、正式の愛人だった銀座のクラブママの娘はA子と友達であったという。
すごい話だ。ママは悩み、占師などに相談したらしいが、全員口をそろえて「A子というのは魔性の女だ。勝ち目はない」と言い切ったらしい。その後もA子は、風吹ジュンの夫(川添象郎氏)を奪い、現在その川添氏を芸能界の魔性の女・荻野目慶子と取り合っているという。このA子のすごさがおわかりいただけたかどうか。とてつもない女である。どてらいヤツと言ってもいい。友人の放送作家町山広美は「ライフワークとしてA子の人生を見守りたい」とまで言っている。

この「A子」のことを扱っているのが、林真理子の最新作「アッコちゃんの時代」になるわけで。一応わたしは週刊新潮連載時から気に掛けていました(→)。で、まるまる一冊読み終えて感じたこと。いやー、もう「すごい」のひと言。文字通りの魔性だ。……って、決してA子さんのこと自体ではなく、どちらかというとこの言は、彼女たちが若かりし頃の「バブルの時代」の当てられる。とかいって、2005年の今でもいるのかな。500万の時計をプレゼントされて「私は他の人より損をしている」なんて思っている女性が。(男性でもいいけど。)
華やかなりし80年代末のニッポン。ユーミン、聖子、郷ひろみYMOチェッカーズ(すみません、食・ファッションにはとんと無知なので、芸能ネタにしか反応できない……)と、時代のイコンが入り乱れての狂想曲。ああ、楽しかった、と読み終えて正直に思った。「冗談じゃない! あんなうわついた時代のどこに惜しむべき価値があるんだ」てな声も上がりましょうが、いいじゃないですか、なんてったって、主役が“魔性の女”と称される美人なんだから。全然そちらの世界に縁のない人間にとっては、ただ過ぎ去りしおとぎ話を聞かされてるような気になります。「源氏物語」みたいなものか。というのは言い過ぎか。でも、小説を読み進める上で、こうした「豪華絢爛」ってけっこう大きな役目を果たすよね。