ゲイである、ということに作中でなっているオダギリジョーと、柴咲コウのラブシーンについて

ああ、結局これも、オダギリジョー鑑賞ツールとして映画を利用している女の子向けなんだなあ、とちょっと鼻白んだのも事実です。だって、そうでしょう? 物語上、このふたりが恋仲になる必然性なんてちっともないじゃないですか。なのに、スクリーン上のふたりは、熱烈な、なんて文字で表すのもこっぱずかしいキスシーンを連綿を続けているし。けれど、ああ、最初感じた確信は翻されませんでした。翻されなかったどころか、ナンシー関流に言うと「チョロQの原理」で、より好感度が上がったという次第で。
一見、きれい、というか、ほんと、立派なラブシーンなわけですよ。なんてったって、今をときめくオダギリジョー柴咲コウのコンビだもの。ラブシーンをやらせたくなる側の気持ちも実のところわからないでもない。んでもって、オダギリジョーの体の下で、胸をさかんに弄くられている柴崎コウが、粘着質なキスの間に「触りたいとこ……」なんて呟いたら、次に来る台詞は「触ってもいいよ……」になると思うじゃないですか。が、ああ、実際に柴咲コウの言い放った台詞が秀逸だったな。あの、彼女の整いすぎた顔と相まって、効果は抜群でした。
「触りたいとこ……ないんでしょ」
うまい。わかるかな。このリアル。物語世界が崩壊されようとした直前に、ぐいっと持ち上げる浮遊力。もしかすると、「そしてふたりは恋仲になりました。めでたしめでたし」なんて、「金返せ!」的なオチが来るのかと恐怖に怯えていた観客のひとりが、ここで無事に救われたのです。