ニート

2005年のこの時期に、このタイトルで小説が出すということは、どんなにかドロドロで救いのない内容が展開されているのかと、多少気がまえていたのだけれど、読み終えてみると、いつもの絲山秋子の世界が淡々と展開されていたのでした。やはり、根が上品ですね、この人は。最後のスカトロの話にしても、きわどい描写はあるものの、どこか一線を守っている節がある。中に一遍、きちんと職を持ち、恋人との微妙な関係を築いている青年の話があるのだけれど、彼のこうしたモノローグの方が、NEETや前科持ちの人より、はるかに時代に密接した気持ちを伝えているように思えました。(まあ、単にわたくしにフィットしただけなのだが。)ちなみに、この本に収録している短編の中では最新作。2005年9月に「野生時代」に発表した、その名も『へたれ』より。

僕には自信がない。僕は自分のことを信用していない。来年も再来年も同じように一緒に過ごしていけるのか、一年、二年の積み重ねが、五年、十年の積み重ねになっていくのか。変わらぬ気持ちや育ち続けるものが本当にあるのか。
僕は疑うことを覚えてしまった。僕はへたれだ。
揺れている。

今度は、ニート側から語られている話も読みたいな、ニートを愛してる側からじゃなくて、なんて、ずうずうしいこともちらっと思いました。(性別不問で。)