小川洋子の繊細さ

読売新聞毎週土曜日に連載されている小川洋子の「ミーナの行進」。そろそろ最終回へと近づいているのでしょうか? 前回、そして今回と、ペットのコビトカバの死について描かれていて、ついつい涙腺が緩みがちになっているのだけれど、作者がことさらに悲しみを前面に押し出そうとしているわけではないから(つまり「泣き」で惹こうとはしていない)、そうした姿勢に、よけい涙腺が緩みがちになっているという次第であります。
小川洋子の、こうした感情のデリケートな切り取り方は、もちろん「博士の愛した数式 (新潮文庫)」でも発揮されていて、先日、この作品を、文庫化になった機会に読み返してみたのだけれど、ここに出て来る、愛情には違いないけれど、それだけではどうにも言葉が足りなさ過ぎる関係の描写に、やっぱり「うまいなあ」と唸らざるを得ないのでした。深津絵里、きちんとヒロインを演じ切ることができたのかな? むつかしかったろうなあ……。