みずうみ

集団の暴力により損なわれた幼い魂がいかにして恢復の軌跡を辿っていくか?
というかなりに思いテーマを扱っているので、
決して読後感はすっきりさわやかというわけにはいかないのだけれど、
それでも、文章に緊密感があって「ああ、読んでよかったなあ」と素直に思えました。はい。
何より、「どうよこの川内倫子の写真の美しさは!」と
ことあるごとに人にすすめてまわりたくなるような装丁の力は大きいです。
よしもとばななの小説にはあまりマッチョは出てきませんね、そういえば。
肉体的なそれではなく、あくまで精神的な。
今回の青年なんて、特にそれが著しかったような……。
んー、というかこれ、男女の役割を逆転したとすると
――傷つけられた女の子を男の子がさりげなく助けるという図――
むつかしいかな?
さりげなくというところが。
という意味においての「マッチョ」。
別に、現実としてそういうさりげなさに憧れるわけではないけれど、
バランス感覚において心地良さを感じることはあるかもしれません。

みずうみ

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