もったいない……

 岸本葉子の新刊に、「ぼんやり生きてはもったいない」というエッセイ集があります。この題名に惹かれて、手に取ってみました。
 一読し、この本に、何ら悪い感情を抱きようがないことに気が付きます。むろん、岸本葉子が綴る文章の清澄さにも。
 ただ、と断った上で思うのは、「ぼんやり生きてはもったいない」の、「もったいない」という箇所が、真剣に、この先、曲者になっていくのではないのかなあということでした。
「若輩者のくせに、偉そうに。」――ほんと、そうですよね。ですから、この本自体に、何ら悪い感情は抱かなかったということは、再度記しておきます。

 あっちこっちに興味がいって、アンテナがせわしく反応するようでは、交感神経が常に優位の状態で、体によくないかもしれない。ぼんやりしているくらいの方が心身はリラックスできるのかも。
 けれど、それがなかなかできない。せっかく生きているのに、もったいない気がしてしまって。真底、貧乏性なんですね。

 ……むつかしいものだなあ。何も言わず、にっと笑って岸本氏の肩を叩きたくなる気分。(きしょいか。)