「ユーザーイリュージョン」読了

 そういえば、ぼくはわりに昔から身体と脳との調和について書かれている本が好きだったりするんだな。身体と脳、というと、なにやらものものしいイメージがあるけれど、いやいや、そんなたいそうなもんじゃなく(と書くと、以下に記す本に対して失礼になるか)、もう少し、日常にぴたりと密着したようなかんじのものになる。つまりは、日常での援用が可能な本。言い換えると、何か日常で厭なことがあった際に(というか、自己嫌悪に陥るような失敗をした際に)、そうか、これって、身体と脳がバラバラになってるから起きてんだなと自分(自分?)を納得させるために読むような本。
 例えば、そうした一番手でいうと、吉本ばなな(当時)の「アムリタ」とか。

 考えちゃだめなんだ。極端な話、走るとか、泳ぐとか、そういうのでもいいくらいだ。今したいことにためらいなく足が動くように調整しとかないと、頭の筋肉が熱を持って、オーバーヒートしちゃう。

 ――まあこれだけ切り取って読むとこちらのいわんとしていることが伝わらないかもしれないけれど、けっこう、影響受けてるんだな。上のフレーズには。あたまの使いすぎに注意せよ、身体のメッセージを見逃すな、ってことで。
 あとは、橋本治の「「わからない」という方法」とか。脳を上司に、身体を部下に例えての、以下のフレーズ。

 愚にもつかない「上の方」の言うことばかり聞いて、「脳」という上司は、部下の話に耳を傾けない。(略)「身体論」というはやりのハウツー本には目を通すが、肝心の「部下の心」は目に入らない。だから「身体」という部下達は、「おめーなんかが出世したら、世の中終わりだよ」とか、「あーあ、こんな会社やめようかなー」などと、いつも脳なる悪口ばかり言っているのである。だから、体がだるい。疲れやすい。効率が上がらない。将来の展望が見えない。もてない。「部下を活用できない上司は上司として失格」ということを知らないでいるのが、脳という自己の昇進ばかり考えている最悪の上司なのである。

 ――正直、どきっとする。自己の昇進ばかり考えている最悪の上司……。あ。あくまで、例としての脳の話だよ。勘違いなきよう。 
 昨日、ようやく「ユーザーイリュージョン」を読了した。もう、めちゃくちゃ面白くて、お奨めだよ! とところかまわず触れ回りたいところなのだけれど……どうにもこの大部の著を紹介するのには、現在の自分の力量では手に余るところがある。というわけで、上のような援軍に頼ってみた次第なのだけれど……。「ユーザーイリュージョン」の場合は、脳と身体、というより、意識と無意識に話を絞っているかんじだ。それでも、言わんとしていることは、上の2編と共通しているように思える……。――まあ、また、内容が身体に馴染むようになったら紹介し直すかもしれない。試しに、いま、中の文章を数点引用したら、それこそ無意識レベルで「なんか浮いてるなー」と強烈な違和感を覚えたので。