「バルカン超特急」

 列車の中で仲良くしていたお婆さんが突然消え、「ねえどこ行ったの?」と訊いても、みな「いなかったじゃないですかそんな人、しっかりしてよ」てな具合にぜんぜん取り合ってくれなくて、さてどうしよう、と悩む映画。ぼくは、見ている映画があまりにおもしろいと、「えー、うそだろー、やめろよー」と、かなりうるさくひとり言を発するのだけれど(「志村ー、うしろーうしろー」の子供みたいだ)、この映画にも、けっこうひとり言をかけた率が多かった。戦前の作ながら、ヒッチコック映画イギリス時代の代表作、と目されているらしい。さもありなん。こうして、あまり期待してなかった映画が驚くくらいおもしろいと、なんかうれしいを通り越して、逆にもうしわけないような気分になるね。期待してなかった処置に対するもうしわけなさだから辻褄は合ってるんだろうけれど。古いから退屈、てな法則は、当たり前だけどまぼろしなんだといまいちど確認した次第。