「鳥」

 ――別に洒落るつもりはないのだが、このヒッチコック1963年の不朽の名作を見て、ぼくは、文字通り、全身鳥肌が立った。純粋な恐怖で鳥肌が立つというのは久しぶりだったから、かなり新鮮だったね。特に、ヒロインの背後で、つぎつぎとカラスがジャングルジムに降り立つシーン。ふっ、とヒロインが後ろを振り向いた時には、既にもう、ジャングルジムは、カラスまみれになっていたという……。「うわー、おっかねー」と、思わず口にしてしまった。そのくせ、どのシーンも、BGMに頼ってはいないものだから、「おお、フェアだなー」と感心し、進んで、その恐怖の虜になっていったという次第。まあ、相手が鳥だと、どうしても「がんばれよー」といった応援モードになってしまうというのもあるしね。飛んでんの見てんの楽しいし。(無責任。)あと、息子の恋人に嫉妬する母親の心理というのも、わりにホラーだなーと見ていて思った。まあこの場合は寡婦という立場も慮らなきゃならないんだろうけれど。