「老人力」補足

 昨日の捕足です。大江健三郎の語る「老人力」について。

 さて、二十一世紀日本語の辞書を自負する『広辞苑』が採用しなかった言葉として、それが良識だとは思うけれど、残念なのが「老人力」です。
 今年の成人式でも、全国で、若い日本人にこうあってほしいということで「毅然」とか「凜と」とかいう言葉がさかんに使われることでしょう。しかし、年をとった人間がこういう時、当人の硬直した特質、つまり老人に表面化する後ろ向きの力しか意味していないことがしばしばあります。
老人力」はもっとイキな力です。

「言い難き嘆きもて」(2001年刊)より。
 と、いうわけで、やっぱりこの「老人力」は、大江氏の中では、「凜と」とはまったくベクトルを逆にするものとして捉えられていた、と思われます。
 いまちょっと見てみたら、goo 辞書では「老人力」って掲載されてますね。新語辞典でだけど。

(1)老人の有する力。
(2)加齢により失われるものを肯定的にとらえたもの。物忘れを「物をうまく忘れていく力が得られた」と考える,力の衰えを「力を抜こうと意気込まなくても,自然と力が抜ける」と喜ぶなど。
〔(2)は赤瀬川原平の著書「老人力」(1998 年(平成 10))より〕

 正直、ぼくのまわりでは、「老人力」って、いまではぜんぜん耳にしないです。こういうのって、定着するのがむつかしいのかな? あまりにふくざつすぎて。