『ほかに踊りを知らない。』読了

 川上弘美氏の『東京日記』第2弾。門馬則雄氏のキュートなドローイングも健在。なごみまくりのいい湯かげん。これから読む人のために、えーと、ぼくはうっかり見過ごしていたのですが、きちんと各項の「天候」にまでチェックを入れておいた方がいいですよ。その方が、楽しみも倍加されるはず。——それにしても、ここしばらく、ある種の目的を持った読書ばかりしていたので、こうした、いったら悪いかもしれないけれど、しかし実際にそうなのでいってしまうけれど、実用的な目的にそぐわない読書というのは、ほんとうに、パラダイスだなと強く思いました。
 蛇足。ちょっと、ぼくもこの本のフォーマットを踏襲し、最近あったことを記してみます。

十一月某日 晴
 地下鉄の中でペンギン拉致の話を耳にする。
 友人の父親が、動物園で見たペンギンの可愛らしさに溜まらなくなり、深夜、動物園に忍び込み、自転車の前かごに入れて1羽を家に持ち帰った。が、あまりの臭さに辟易し、翌日の夜、再び自転車の前かごに入れて、誰にも気付かれないように返したとのこと。
 女性同士の会話である。

 どうにも、川上版のようなぼうようとした感じは出せないな……。