『パラレル』読了

 提出されたイノセンスは、提出された時点で既にイノセンスではないわけだけれど、提出じたいにある種のイノセンスが漂うことは少なからずあって、今のところぼくにとっての長嶋有氏の魅力というのは、この「イノセンス」――というよりもむしろ「ある種」の方にばっちり傾いているのですね。(古びた団地の屋上で燦然とかがやく朝の光。)まだ、2作しか読んでいないのだからそんな風に決めつけるのは早計かもしれないけれど。

 自分の資質を度外視して、激しく、この小説を、映画化してみたいと思ってしまった。そのくらい――「どうぞ、この作品を使い、ご自由に遊んでください」といわれているかと誤解してしまうくらいに構成がしっかりしてるんだ。これ、出たくない若手俳優っていないんじゃないか? 妄想か? 長嶋有著。文春文庫。2007年。