『メタボラ』読了

 きつい話っすねえ……。いやこれ非難じゃなくて、そのくらい——身体に響いてくるくらいに——パワフルだったと感嘆しているのだけれど。朝日新聞に2005年の11月から2006年の年末まで連載されていた作品だそうで。断片的な情報はちらほらと耳に入ってきていたものの、ぼくは今回が初読。で、思ったのが……あのラストで、はたして登場人物たちは、魂の救済が為されたのだろうか、ということでありまして。魂の救済なんて、なまぬるい、ということになるのかしら? どうなんすかね?
 なまじっか、主人公のひとりにゲイの男の子が配されているから、ボーイミーツガールで大団円、という常套手段は使えない(使ってもいいのだろうけれど、少なくともこの作品世界においては慎重に排されていた)ことが際立っていたような。つまりは、自分が無自覚にロマンス信仰サイドにどっぷりと浸かっていることを再認識させてくれた、というのもあるのだけれど……申し訳ない。正直なところをいうと、この小説って、まだ完結に至ってないじゃないかな? 代謝途中というか。これはこれでいいのかな? よい旅路を、みたいな? うーん……。途中じゅうぶんにおもしろかったのだけれど、だからこそよけいに、わりに真剣に(何様だとは思いつつ)悩んでしまう。桐野夏生著。2007年。朝日新聞社刊。