『絡新婦の理』読了

 美人3姉妹に蜘蛛屋敷に連続目潰し魔にフェミニズムに——堕天使、黒い聖母、アンドロギュヌス。1冊の本でこれだけの材料を使い熟せているという技術にとにもかくにも感嘆の息を漏らさざるを得ないっすよ……。いやほんとに。駒の控え加減(加えて話法の均衡)も見事だし。ここまで来るとなんかもうフィジカル方面への感嘆をさえもしてしまいます。これらを執筆していた頃の京極夏彦は、いったいどのような生活を送っているのだろう? と、著者自身への興味も(野暮を承知で)湧いてしまうというものです。男女についての『狂骨』の頃に抱いていた思いは、わりにこの作品でも如実に喚起されたという次第。こうして、どんどん、そっち方面へと抗う術もなくなすがままにずぶずぶに取り込まれていくのでしょうな……。ひとは。ていうか、自分は。そうした様子を俯瞰して見るのも、また妙にゆかいで。京極夏彦著。2002年の講談社文庫。こんな具合で、シリーズ第6弾、次の『塗仏の宴』も読みます。(ていうか、既に読み始めているのですが。)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)